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自分のためのアウトプット

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Aug
15th
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「ディシプリン*帝国の誕生」の導入部における「コントローラー」の役割

 まずはこちらの動画を見ていただきたい。

発売前のゲームを実況プレイしたら売れねぇだろ【開発者自演】 part1

 これは今月25日に発売予定のゲーム「ディシプリン*帝国の誕生」を、発売前にも関わらずプロデューサー自らを交えて実況プレイしてみたという動画だ。本来ならば発売後にファン主導で作られてきた実況動画の常識を破壊する、漢気溢れるプロモーションに敬意を表し、私も発売前かつ動画を見ただけでレビューを書いてみようという気になった。未プレイ故の偏見、誤解等あるかと思うが、どうかご容赦願いたい。

 さて、動画を見ていただいた方ならお分かりかと思うが、「ディシプリン」は非常にアクの強いデザインがなされたゲームである。特に印象的なのが、動画後半に登場するyouコンというキャラクターで、プレイヤーの持つWiiリモコンを具象化した存在として、気持ち悪い棒状の生き物のような外見を持っている。ゲームの目的は、このyouコンをうまく用いながら、施設の住人とコミュニケーションを取ることにある。しかし、誤って看守にyouコンを使っているところが見つかってしまうと、プレイヤーは「おひとりさま」と呼ばれる独房に入れられ、そこでyouコンと対話したり、揉んでやったりしなければならない。これはもちろん、マスターベーションの隠喩である。

 コントローラーと会話するのはまだいい。なぜ、プレイヤーは独房でオナニーごっこをしなければならないのか。一見すると意図が読み取れないこのゲームプレイに、どんな意味があるのか。それを考えるためには、ゲーム内におけるこのキャラクターの役割について考察する必要がある。

 ゲーム内でyouコンと会話できるのは、プレイヤーがミスし、「おひとりさま」に連れて行かれた時だけだ。しかも、ゲームを始めたばかりのプレイヤーは、youコンの存在を知らされない。最初に「おひとりさま」に連れて行かれるまで、ミスすることが前提のゲームデザインがなされている。

 これは初心者救済システムである。ミスしたときだけプレイヤーにアドバイスが与えられるという仕組みは、過去のゲームにも採用された例があり、実際によく機能してきた。プレイヤーの上達に伴って、ミスをすることはまれになり、その結果として、初心者救済システムを利用する機会は減っていく。つまり、必要なときに必要な情報が提示される、理想的な受動学習の仕組みが成り立っているのである。youコンとの会話は、ゲームの導入部におけるプレイヤーにとって、非常に重要なヒントになる。そのためのキャラクターなのだ。だから、会話に伴うオナニーごっこも、ゲームの導入において重要な役割を果たしていると推測することができる。

 ここで、話は少し脱線する。ゲーム内に登場するyouコンは、初めて登場した時、プレイヤーの手中にあるWiiリモコンと、見た目は違うが同じものなんだと発言する。しかし、一般的に考えれば、Wiiリモコンは現実世界に存在する物質的なものであり、youコンは画面内で喋るただのキャラクターだ。プレイヤーはWiiリモコンが画面の中に存在することにより、ゲーム世界への没入感を得るだろうか? いや、むしろ当初は、画面内の気持ち悪いyouコンと、真っ白なWiiリモコンが対応しているという事実に、混乱を覚えることだろう。メタフィクション的構図が、ここに発生する。プレイヤーは自分が気持ち悪いyouコンを握って、さらにはオナニーしているのだという考えを排除するために、画面の中のものと現物とを分けて考えたがるだろう。ゆえに、フィクションをフィクションとして考えながら、同時にフィクションとリアリティが対応しているという、中途半端な体験の中に置かれることとなる。

 ディシプリンは、施設の住人と会話するのが主な目的のゲームだ。プロデューサーの飯田和敏は、このゲームに関して自身のブログで次のように語っておられた。

「ディシプリン」には2009年という「今」を生きる僕が表現しなければいけない事を全てやった。やりきった。 僕が感じている現代社会の問題、僕自身が抱えている私的な問題、ゲームというメディアがダイナミズムを失いつつあるという危機感。 全てに対する思いを作品の中にぶちまけたつもりだ。

飯田和敏BGK*BLG すばらだぬしい! : 新・調律への道程1

 しかしながら、ゲームの住人にそのような深い意図が込められているとは、考えられない人も多いのではないだろうか。ゲームのことはゲームのこと。現実のことは現実のこと。そのように割り切られてしまっては、メッセージは思ったように伝わらない。それを防ぐために、youコンは生み出されたのではないだろうか。

 ゲームの導入部で強烈なインパクトを持って登場し、プレイヤーをメタフィクションの混乱へと陥れる。ゲームと現実とは隔絶されているわけではなく、互いに地続きの存在なのだと、プレイヤーに学習させる。そして、十分にプレイヤーが洗脳されたならば、彼はもう用済みだ。彼の役割は、初心者救済システムの一環として、プレイヤーに「ディシプリン」の楽しみ方を教えることにあった。そのために彼はあえて気味の悪い姿で登場し、それ自体が空想によって支えられている自慰行為を、プレイヤーに強要するのである。つまり、「ディシプリン」は、自慰のように消費されるべきフィクションなのだ。そして自慰がそうであるのと同様に、プレイヤーはゲーム内での体験を自分の実体験へと転換すべきだという思想を、youコンから知らず知らずのうちに教えられる。