24th
台湾で出会った駅員
(校内新聞用に書いたエッセーのボツ原稿のうち、面白いと言われた方を載せる。)
地下鉄に揺られること数分、台北市西門町へと赴く。西門町は若者の町として知られている所だ。が、そこで自由行動となってすぐ、私ははたはた困ってしまった。衣類、音楽、軽食、そういう類にあまり興味を持たない私には、行くべきところがなかったのだ。
さて、かといって無目的に散策するのも時間の無駄なので、ひとまず西門駅へ行って情報を集めてみることにした。ガイドマップを求めてうろうろしていると、声をかけられた。英語だった。どこから来たのかとか、クラスメイトはどこにいるのか等と聞いてくるので、どう説明すべきか戸惑う。たどたどしい英語と身振り手振りで何とか説明して、どうやらそれは伝わっているようなのだが、いつまでもしつこく話しかけてくる。「Do not mind me.」とか「I got it, thank you.」とか言って逃げようとするのだが、あいかわらずインフォメーションセンターの場所を教えてくる。結局「I’m not lost!」と叫んだら伝わった。
さて、それだけならただ迷子に間違われたというありがちな話で終わるのだが……実はその後、班員と合流して移動することになったときに、またその駅員に出くわしてしまったのだ。プラットフォームで地下鉄を待っている最中、駅員の一人が苦笑いをしながら私をじろじろ見てくるので分かった。彼は私の班のガイドを見つけると、何かしきりに話し始めた。事情を説明しているようである。
そうしてその駅員は私に声をかけた。
ガイドの二人は「私がビックリしたために、とっさに説明できなかったのではないか」というようなことを言ったらしい。落ち着いた、強い人間になれといったことをくどくど言い寄ってくる。彼にはその時の私が精神の三つのsourcesを欠いているように見えたらしい。
聞いていて、私はだんだん面倒くさくなってきた。大体どうしてわざわざ台湾まで来て、こんな駅員に説教を受けなければならないのだろう。修学旅行の思い出がこの説教になるのかと思うと悲しくなってくる。適当に相づちを打っているうちに電車が来たので、彼は「Be short and strong.」と言葉を残して去っていった。
しかし、よくよく考えてみれば、これは私たちの四日間の修学旅行の中でも数少ない、まっさらな現地住人とのコミュニケーションであったのもまた事実である。現地ガイドはおそらくそれ相応の知識を持っているのだろうし、町で日本語で話しかけてきた老人は、かつては日本人だったのだろう。だからこそ、この駅員との会話は貴重だったのかもしれない。
地下鉄に揺られながらそのようなことを考えた。私はその駅員の名前を聞いておかなかったことを、今では少し後悔している。
YosukeM's
